合気道.不思議シリーズ第3回

 

     水車の技法

栗山 公伸

 

 触れずに人が飛ぶ。いわゆる「遠当」の技法。

本部の渡邊信之師範が全国大会で演武される。本当に不思議だ。

5年ほど前に自分も憧れて、渡邊師範そして西野式呼吸法の西野皓三氏に付いた。

両先生の腕を握ったがぜんぜん自分は感応せず、両先生とも「これは話にならんわ」という顔をされた。その時の表情がお二人ともそっくりで、その偶然性を今でも思い出す。

 

 鍜練してきた人の方が触れずに飛ばしやすい。盛んに気を出しているから。逆に全然気を出していない相手は自分から触れなければ決して倒せません。と言う。

 

 遠当を行う先生はお二人だけかと思っていたら、九段会館で「全国遠当大会」というものがあり、何人もの人が出場し次々と人を飛ばす。これにはびっくりした。お二人の専売特許でないことだけはわかりました。

 

 それにしても相当な鍜練のたまものであり、普段の稽古をやっていて、寝て起きて気が付いたら自分もというものではないだろう。

 

さらに不思議な技法があります。

植芝盛平開祖が実際に行っている写真が残されている。

開祖が棒の一端を持つ。それを稽古人3人がかりでつかんで横へ押す。びくともしない。いわゆる「水車の技法」である。梃子の原理で考えれば、とうてい考えられない。

和歌山県合気道連盟の元理事長 故高岡貞雄師範が行っている写真がある。棒が三人の力でたわんでしなっているが師範はびくともしないで立っている。

 師範に言わせると「相手の足を止めてしまうことです。足を止めてしまえば瞬間相手の全身は硬直します。それを倒すわけです。」近代物理学ではとうてい説明出来ません。

 

 金子信造さんが言った。それなら葛飾合気会にもいますよ。林前会長は人間ブリッジで何人も腹の上に乗せたし、渡辺勝太郎五段は濡れたタオルを一瞬にして棒状にしたり、また名刺で割り箸を切ったりしたと。鎌田さんと一緒に自分も試した。とても。

 

 そういえばあのバクテン。後ろに目があるように飛ぶ。不思議だ。そうです。田村健一さんもその一人だったのです。

 


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